「好きな歌人は?」――そう問われたら、私は「和泉式部(いずみしきぶ)」と答えます。
情熱的な恋をしたことが、時に醜聞として語られる彼女ですが、その和歌は、不思議なほどに透き通っているのです。和泉式部の和歌では、世界が主観的に捉えられていますが、その透明感ある美しさを味わうと、きっと彼女の心も真っ直ぐでみずみずしいものであったのだろうと思われるのです。
そんな彼女の和歌は、『拾遺和歌集』をはじめ、様々な勅撰和歌集に採られ、「百人一首」にも収められていますが、家集『和泉式部集』はなかなか気軽に読むことができません。(『和泉式部集全釈 正集編』(笠間書院)は定価2万円以上します……。)
全釈や『和泉式部日記・和泉式部集』(新潮日本古典集成)などを参照しつつ、皆さんに、和泉式部の和歌を紹介できたらと思っております。
※歌の番号や表記は、『和泉式部集全釈 正集編』(笠間書院)に拠りました。